女王との出会い

嫁さんに,ミツバチの新しい女王はオスとはどう交尾するのだっけ・・?と聞かれた.アリの女王,シロアリの女王・・つまりは社会性昆虫といわれる高等なグループの支配は女王様によって行われている.でも彼女らは最初にオスと交尾して精子を体内にためておいて子孫を残している.シロアリは少し難しいが,アリとミツバチは同じハチの仲間なので,ほぼ同じである.もちろんこれは女王が1人しかいないものに限られるが・・(たまにたくさんの女王がいる種もあり,これは話がややこしいので省略).アリは羽アリが空中でオスとメスが出会って,交尾して地面に降りたら羽を落として,女王になるべきメスだけが地中に潜る・・というのが原則である(もちろんいろいろな例外もある).

さて,ミツバチはどうか・・これは新しく女王を作る時期になる頃,巣の中にオスが少数ながら一緒に住んでいる.ここで,そのあたりのことを,日本だけでなく,ブラジルあたりなどのもの含めて詳細に研究された北大の坂上昭一先生が「ミツバチの世界」という本に書かれている.坂上先生はこの手のハチにはものすごく詳しくて,私は先生のハチの本はいくつか読んだが,岩波新書のこの本は最初に読んだこともあって感激ものであった記憶がある.
日高先生,コオロギ類の研究で有名な正木進三先生(弘前大学)と並んで,当時は昆虫界で最も有名な,素晴らしい先生の1人であったと思う.

ミツバチは一つの個体が1人ではなく,巣箱全体で一つの個体のような動きをしている事が分かって非常にすばらしい本であった.
さて,巣箱が狭くなったという事になると,女王さんは新しい女王を作る・・のか,作らされるという方が正しいのか・・いずれにしても自分の娘である王女を育て,それが成虫になって羽化してくる数日ほど前に,古い方の女王が,働きバチを半分ほど連れて外へ出て行くということになる(分封).

ここで,新しい女王になるために,生まれた王女は5〜7日くらいは巣にとどまり,やがて巣箱から外へ飛び出すと,あちこちから集まってきていたほかの巣箱からのオス達が待ち構えていて,交尾しようとせまる.
うまく空中で交尾できたオスは,なんと交尾器がメスの体内に残った形でちぎれ,死んでしまうという.すさまじい交尾方法を採るのだそうだ.この新女王は数回の交尾をするのだそうで,オスがその回数だけ死ぬことになる(2日ほど飛び出すので,7〜10回の交尾をするという).
ミツバチのオスは,巣の中ではぐうたらで,ほぼ何もしないで,働きバチのじゃまにならないようにしているそうであるが,交尾の機会がありそうになると,毎日出かけていくのだそうだ.帰って来たオスは,つまりは交尾できなかったオス故に,命があるわけで,帰ってこなかったオスはどこかでうまく交尾できたけど,その瞬間に死んでいるのだという.
ニホンミツバチ

最近話題のドローン・・英語でこのオス達のことを指す言葉であるが,じっとして何もしない..つまりはうまくホバリングして動かないあの機械に,オスバチを見たのでしょうかね・・でも巣の外ではまったく違う事を知っていたのでしょうか.